夜行バスの事故率はどれくらい?事故の原因と安全対策を紹介

夜行バスを利用するとき気になるのが、運行中の事故です。特に夜行バスは、乗車中のほとんどが睡眠の時間なので、異変に気づいたり、対処したりするのが遅れる恐れがあります。せっかく利用するなら、不安は解消したいものです。各バス会社でどのような対策を取っているのか紹介します。


この記事は約6分で読み終わります。

夜行バスの具体的な事故率について

国土交通省自動車局の「自動車運送事業用自動車事故統計年報」によると、令和元年(2019年)における夜行バスを含めた乗合バスの重大事故は2,435件でした。死者は17人です。

警察庁の発表による令和元年の事故は381,002件、死者は3,215人ですから、かなり少ないといえます。割合にすると件数では約0.6%、死者数では約0.5%です。

総走行距離は30.307億キロですから、長距離を走行する割に重大事故が起こる確率は限りなく低く、「バスは安全な乗り物」といっても間違いではないでしょう。

もちろん、過去には多数の死者が出る事故が起こったのも事実です。そのため、多くのバス会社では同じ事故が起こらないように対策をしています。

乗合バス側が事故の第一当事者(最も過失が重い当事者)である場合、車両の故障に起因するのが全体の1/2、運転手の操作や健康状態に起因するのが1/3です。

前者については、定期的な点検を行って回避し、後者については運転をサポートする車両を導入したり、運転手の健康管理を徹底したりすることで回避しています。

重大事故を起こすとバス会社にとっては社会的な信用を大きく落としてしまうので、安全対策の強化は優先事項です。しかし、安全対策には費用もかかります。運賃を安くするために、こうした費用を削っているところも、まったく無いとは言い切れません。

夜行バスの安全対策が気になるなら、運行しているバス会社のWebサイトを見てみましょう。安全対策に力を入れているところは、その内容を積極的に公開しています。そのようなバス会社を選ぶと安心です。

各バス会社が行っている安全対策

続いて、各バス会社ではどのような安全対策を行っているのか見てみましょう。

安全システムの導入

私たちが運転する小型の乗用車と同じく、近年はバスにもさまざまな安全システムが導入されています。その中でも、乗客の安全を守るものは以下のとおりです。

運転手監視システム

先述のとおり、重大事故の中で運転手の操作や健康状態に起因するのは、全体の1/3を占めます。運転手の状態を常に監視し、異常を感知すると事故が起きる前に対処するのが「運転手監視システム」です。

例えば、「ドライバーモニター」は運転中の姿勢や顔の向きはもちろん、まぶたの開閉状態も検知します。前方に向いたセンサーは走行車線を検知し、逸脱すると警報を鳴らして注意を喚起する仕組みです。

さらに、一定の速度を超えた状態でふらつきを感知すると警報を鳴らし、それでも修正されなければ、前を走る車や障害物に衝突しないよう自動で減速するシステムもあります。

こうした異常は車内の乗客や、ほかの車の運転手も分かるようになっているので、事前に身を守ったり、バスから離れたりするなどの対応が可能です。

衝突防止回避システム

衝突の防止を回避するシステム(PCS)は、運転手に異常が無くても作動します。減速しないと衝突する距離に歩行者や車を検知したり、前方に障害物があったりする場合です。

100%感知できるわけではありませんが、夜行バスのように、暗くて見えづらい中を運転するときには、見落としをサポートしてくれるでしょう。

ちなみに、衝突防止回避システムのうち、衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)は、新たに生産するバスに装着が義務付けられています。新型モデルなら2014年(平成26年)11月以降、継続モデルなら2017年(平成29年)9月以降に生産されるバスが対象です。

運転補助システム

夜行バスは1回の運転が長距離で長時間におよびます。運転手が疲れて事故を起こさないよう対策が必要です。そのために運転を補助するシステムも搭載されています。

例えば、「クルーズコントロール」は運転手がアクセル操作をしなくても、一定の速度を保ってくれる機能です。前を走る車があれば、追随することもできます。渋滞中の低速でも機能し、操作は手元のステアリングスイッチから行えるので、前方が疎かになる心配もありません。

「車両安定制御システム(VSC)」は、カーブや濡れた路面の運転をサポートしてくれます。バスが不安定になったとき、エンジンの出力を抑制したり、ブレーキをコントロールしたりして、横転やスピン、路外への逸脱を防ぐ仕組みです。

ほかにも、バスは乗客や荷物の数によって重さが変わり、ブレーキを操作するときの感覚が変わります。「電子制御ブレーキシステム(EBS)」は、こうした違いを検知して、ブレーキをコントロールする機能です。運転手にとっては常に同じ感覚でブレーキを操作できるので、踏み込みの違いによる事故を防げます。

車両の定期的な安全点検

重大事故の1/2は、車両自体の故障に起因するものです。エンジンやトランスミッション、電気装置、燃料供給装置、ブレーキの順で事故につながっています。

道路運送車両法の第48条 では、車両の定期点検が義務付けられており、事業用のバスであれば3ヶ月ごとに1回です。

定期点検では、各装置が正常に作動するか、部品の緩みや損傷が無いかなど、目視や分解などで確認します。異常があれば、修理や交換です。異常が無くても、安全のために一定期間使われた装置や部品を交換する場合もあります。

ただし、車は運転するほど故障するリスクが高まり、定期点検まで待っていると修理や交換する前に事故を起こすかもしれません。そこで、定期点検以外に毎日の点検も行い、早く異常に気づけるようにしています。

例えば、ライトの球切れやタイヤの空気圧・損傷、ワイパーの拭き具合やウォッシャー液の量、ブレーキの効き具合などです。整備担当者だけでなく、運転手も点検に参加します。

乗務員の安全意識向上と健康管理

近年は、乗務員の健康状態による乗合バスの重大事故が少なくありません。特に、連続勤務による疲労や寝不足、心臓や脳の病気、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の影響などが問題視されています。

そのため、多くのバス会社では定期的に乗務員の健康診断を行っており、乗車前にも体調や睡眠時間の確認、血圧の測定、アルコールのチェックなどが欠かせません。SASのスクリーニングや脳ドック、薬物検査まで行っているところもあります。

普段の生活も大事です。体の負担になりにくいシフトを組んだり、食事の指導やメンタルヘルスの相談に応じたりするなどして、運転手が健康な状態で勤務できるようサポートしています。

ただし、どんなに車両や会社がサポートしても、運転手自身が安全運転を心がけないと意味がありません。そこで外部の教育機関を利用するなど、定期的に研修を行って意識の向上に努めています。

乗務員2名運行(運転手交代制)

高速乗合バスは国土交通省によって交代運転手の配置基準が定められており、夜間にひとりの運転手が一度に運行できる走行距離は400kmまでです。それ以上運行する場合は、交代の運転手を用意しなければいけません。

出発からふたりの運転手が乗車したり、途中の休憩所や営業所で運転手が入れ替わったりする方法があります。最初からふたりの運転手が乗車していれば、何か問題が発生したときも運転していないほうが対処してくれるので安心です。

バスブックマークでは、「乗務員2名運行」という条件で検索できます。ほかにも座席指定や女性専用車などの条件で検索できるので、安心して乗車できる夜行バスを選べるでしょう。

まとめ

夜行バスが事故を起こす確率はかなり低く、多くのバス会社では事故を起こさないように、安全装置を搭載した車両を導入したり、こまめに点検したり、運転手のサポートを行ったりしています。そのような取り組みをWeb上で公開しているバス会社なら安心です。