夜行バスの保険に入るべきか悩んだら|加入判断の基準と注意点

夜行バスは安全に目的地まで運んでくれるのが基本ですが、まったく事故に遭わないという保証はありません。 万が一のとき、契約の範囲内で損害を補償してくれるのが「保険」です。夜行バスでも保険に加入すべきか、判断の基準と注意点を紹介します。


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夜行バスの保険とは?

まずは、夜行バスに乗る際はどんな保険に加入できるのか見てみましょう。

乗車中の事故に対する補償が受けられるもの

多くの夜行バスであらかじめ加入しているのは、自動車保険の「対人賠償責任保険」です。バスの運行中に自動車事故を起こしたとき、被害に遭った車の運転手と同乗者、歩行者、バスの乗客に対して保険金が支払われます。

ケガをした場合は、治療費(診察や入院、通院、手術など)や休業補償、死亡の場合は、葬儀費用や将来の逸失利益などです。無制限なら、損害額がそのまま保険金で支払われます。無制限でなくても、保険金で賄えない部分は、バス会社(あるいは運転手)が負担しなければいけません。

もし、夜行バスが自動車保険の「対物賠償責任保険」にも加入しているのであれば、自動車事故による荷物や所持品といった携行品の破損も補償されます。こちらも補償の範囲は契約の内容次第であり、無制限であれば全額です。

保険の種類によって保障内容が異なる

なお、対人賠償責任保険も対物賠償責任保険も、補償が適用されるのはバスの乗車中に、バスに原因があって発生した自動車事故に限られます。

たとえば、休憩でサービスエリアに停車中、バスから降りて事故に遭った場合は、相手が自動車でも補償の対象外です。追突された場合もバス側には過失がないので対象外となります。補償はその自動車の運転手が加入する保険から請求しなければいけません。

また、シートベルトを締めていないなど、乗客に過失があるときも対象外となります。風雪、地震などの自然災害を原因とする自動車事故も、避けようが無いため同様の扱いです。

バス会社の中には、対人賠償責任保険や対物賠償責任保険でカバーできない事故を補償するための保険を用意し、乗客が任意に加入できるようにしているところもあります。「国内旅行傷害保険」もそのひとつです。ただし、加入するには保険料を支払わなければいけません。

夜行バスの保険に入るべきか判断するポイント

夜行バスで任意に加入できる保険がある場合、利用すべきか迷うところです。判断のポイントを見てみましょう。

事故時の補償がなくても良いなら加入義務はない

すでに同様の補償を受けられる損害保険に加入しているのであれば、夜行バスの保険に加入する必要はありません。

損害保険は、実際の損失額が補償の上限になるため、複数の保険に加入しても、ひとつの保険でカバーできるのであれば、残りの保険は無駄になってしまいます。

たとえば、自分で国内旅行傷害保険に加入しており、補償範囲が夜行バスの国内旅行傷害保険と同じであれば、それで十分です。夜行バスが用意する保険と、自分が加入している保険を比べてみましょう。

なお、自分で費用を負担できるのであれば、まったく保険に加入していなくても問題はないといえます。ただし、旅行中に絶対ケガや病気をしないとは言い切れず、費用がどれくらいかかるかは、そのときになってみないと分からないものです。

夜行バスの保険に加入していれば、万が一の事態に備えられるでしょう。

利用料金に保険料が含まれているプランもある

夜行バスをはじめ、バス会社(旅客自動車運送事業者)では、強制加入である自賠責保険のほかに、任意の自動車保険の加入が義務付けられています。対人賠償責任保険の補償額は、最低でも乗客1人つき8,000万円以上、対物賠償責任保険は200万円以上です。

つまり運行中の自動車事故に対する保険については、別途加入する必要はありません。保険料も、バス会社で負担しているか、運賃の中に含まれているはずです。

盗難被害に対する保障が欲しいときも加入しておきたい

夜行バスでは、寝ている間に貴重品が盗まれるリスクがあります。これも損害ではありますが、バス会社で加入している対物賠償責任保険では補償できません。自動車事故による損害ではないからです。

このような貴重品の盗難は、「携行品損害保険(または補償特約)」で補償できます。盗難だけでなく、偶然の事故による破損も対象です。貴重品はもちろん、パソコンやカメラなど高額のものを持ち歩く場合も加入しておくと良いでしょう。国内旅行傷害保険の特約として含まれている場合もあります。

なお、免責額が設定されていると、それ以下の物品については補償の対象外です。また、現金や電子マネー、レンタル品など、無条件で対象外になるものもあります。ほかの保険と同様、故意や重大な過失による損害にも適用できません。とくに、置き忘れや紛失が対象外になるところは注意しましょう。

クレジットカードに国内旅行保険が自動付帯していることも

クレジットカードの中には、国内旅行傷害保険が付帯しているものがあります。もし、付帯しているのであれば、別の国内旅行損害保険に加入する必要はありません。

ただし、適用される条件は、クレジットカードによって異なります。所有しているだけで適用される場合(自動付帯)と、そのクレジットカードで旅行代金を支払っていると適用される場合(利用付帯)です。

また、死亡や後遺障害が残ったときなど、一般的な国内旅行傷害保険と比べて補償の範囲が限られている場合があります。利用にあたっては補償内容をよく確認しておきましょう。

なお、海外旅行傷害保険は付帯していても、国内旅行傷害保険は付帯していないクレジットカードもあります。当然、国内利用の夜行バスは対象外なので気をつけましょう。

夜行バスの保険はどんなものがある?種類や保険料について

最後に、夜行バスを利用した旅行で役に立ちそうな保険を紹介します。

バス会社が加入している保険

夜行バスを利用するときに、オプションで加入できるのが国内旅行傷害保険です。大きく分けて、以下の4つが補償されます。

・旅行中の事故や火災によるケガ
・誤って他人をケガさせたり、他人のものを壊したりしたときの賠償
・携行品の盗難や偶然の事故による破損
・事故による捜査や救助、14日以上の看護にかかった費用

夜行バスの運賃に、200~500円程度の保険料で加入できるのがほとんどです。補償が運行中に限定されるのであれば、目的地に到着すると契約は終了します。4つのうちいずれか(特に携行品の補償)がない場合もあるので、加入前に補償範囲を確認しましょう。

自分で任意加入できる夜行バス利用時の保険

保険会社が提供する国内旅行傷害保険は、夜行バスよりも充実しており、必要に応じて補償範囲を選べるのがメリットです。

補償が適用されるのは旅行を始める日の午前0時から、旅行が終わる日の午後12時までとなります。もちろん、旅行中であることが前提なので、家を出てから再び帰るまでが対象です。

保険料は、日数や補償の範囲、特約の有無によって異なり、損害保険会社にもよりますが、3泊4日なら100円台から2,000円くらいで契約できます。実際の損害が数百万から数千万におよぶ場合もあることを考えると、お得といえるでしょう。

キャンセル料金を補償してくれる保険も

旅行のキャンセルによる違約金や払い戻し手数料を補償してくれる保険もあります。理由としては、本人や家族の病気、出張など急な仕事、交通機関の遅れなどが対象です。

補償の範囲は保険会社によって異なりますが、ツアー代や宿泊料、飛行機代、夜行バスの運賃などが含まれます。保険料も補償内容によって異なり、夜行バスの運賃が10,000円なら1,000円前後が相場です。

保険会社の中には、理由によって補償の対象外になったり、補償額が100%から30~50%に減額されたりするところがあるので、契約前に確認しておきましょう。

まとめ

夜行バスでは、あらかじめバス会社側で対人賠償責任保険などに加入しているので、乗車中の自動車事故については補償されます。降車中や自動車事故以外のトラブルに備えたいときは、国内旅行傷害保険に加入すると良いでしょう。夜行バスのオプションとして加入できる場合もあります。